シネシ単独クレジットの新しい作品です。シネシが曲によって様々な豪華ゲストを交えてソングライターのグスタボ・(クチ・)レギサモンの作品で素晴らしい音楽世界を作り上げています。ゲストにはギレフスキー(笛)のほか、以前このコーナーで紹介したPuente Celesteの素晴らしいパーカッション奏者サンティアゴ・バスケス、コンテンポラリー・フォルクローレ界の大御所ファン・ファルーも参加しています。一部を除きほとんどの曲でゲストとのデュオというシンプルな編成で濃密で多彩な音楽が紡がれています。これを操っているのがニコラス・ファルコフ。彼のアルバムの色彩感も特筆すべきものがありますが、私のイメージですが「大地/土」という言葉がぴったり来ます。そこへシネシの音楽が始まると「風、緑、水」が重なってきてさらに色彩感がアップするのです。レギサモンの作品はまさにラ・プラタ河流域の心を紡ぐにふさわしい、シンプルで美しいメロディ、多様なフォルクローレのリズムに溢れています。ルイス・サリナス(g)の2009年のライヴDVDでアンコールで歌っていた(歌も上手い!)El Silbadorが素敵でいつかやりたいと思っていましたが、このcuchichiandoでも9曲目に7弦ギターとクラリネットのデュオで聞くことができます。改めて良い曲だと思いました。
こちらは待ちに待った再発売のアルバムです。しかも日本語解説付きです。 欲しくてもどこのサイトでも在庫切れとか入手困難となっていて、そうなるとさらに欲しくなるものです。と、最近ここでもよく紹介するEL ARRULLOからのニュースメールで、2011/5/29国内盤発売なるニュースが目に入り、即刻予約し入手しました。Danza Sin FinとはEndless Dance、終わりなき踊り、という意味だそうです。全12曲、5曲でゲストとして、カルロス・アギーレp、ファン・ファルーg、グスタボ・パグリアbandoneonが加わっています。いずれもゲストとの繊細なデュオ・アンサンブルが素晴らしいです。アギーレとシネシの音の会話の自然なことこの上ない。ファルーやパグリアとのデュオではフォルクローレの魅力があふれ出ています。他の7曲ではシネシのみの演奏ですが、7弦ギター、ピッコロギター、チャランゴ、スチール弦ギターを使い分け、曲によっては1人で多重録音してシネシのギターミュージックの世界を広げています。どの曲も魅力溢れる出来映えですが、先にも紹介したLa magia está dentro tuyoのソロギターバージョンが素晴らしいです。またソロチャランゴによるAndando(さあ行くぞ)が印象的です。こういう良質なアルゼンチンのコンテンポラリーフォルクローレの作品をクラシック奏者のレパートリーとして広く認識させ、定着させたのが、日本語解説でも触れているビジャダンゴスgによる録音と言えます。アルバムと合わせて「アルゼンチン・ギター作品集」を出版したのが大きいです。魅力的な数々の曲ですが、多分に作曲者=演奏者の感性に因るところが大きく、演奏者の立場では敷居が高かったのですが、譜面になったことで多くのギタリストが取り組みやすくなったのではないでしょうか。解説書では1998年出版とありますが、1995年の間違いです。当時、この手の譜面は皆無に等しく、私も飛びつきました。 さて次は、Danza Sin Finと同時期の録音でシネシの朋友、モギレフスキーとの作品です。